柿
柿の木をみました。丸い形の実。その場所を訪れたのは一度や二度ではなく、
数限り無い回数に及んでいるというのに、そこに柿の木があるということに
気がついたのは初めてのこと。
常とは異なる状態に車が止めてあり、その近くに柿があった、
そういう一連の流れによるもの。
"いつも見ている"という思いは、案外、頼りないものなのかもしれません。
丸い大きな実を数多く実らせて枝を大きく撓ませた、丈の低い柿の木。
"どこにでもあるもの"と見慣れた人は、そう言うことでしょう。
けれど自分の目には、遠い昔に見たような、どことなく懐かしいもの。
身近にあったはずなのに、どこかへ消えてしまったもの。
ああいう木を愛でながら、あたたかなお茶をゆるりと味わいたい、
ごく自然にそんなことが頭を過る、いつのまにかそういう気候になっています。
夜の帳が降りるのも、実に早くなったものです。